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帽子 NHKドラマ 緒形拳さん追悼
2008年10月14日 (火) | 編集 |
 2008年8月に全国放送されたNHK広島放送局80周年記念ドラマ「帽子」が、緒形拳さんをしのんで10月10日に再放送されました(番組HPはこちら)。

【あらすじ】
 広島・呉にある老舗の帽子店の帽子職人・高山春平(緒形拳)は、頑固な1人暮らしの老人で少しボケが始まっている。警備会社の河原吾朗(玉山鉄二)をいたずらで呼び出しては困らせる日々である。ある日、吾朗の落した手紙から、吾朗の母はかつて呉で兄妹のように生活し、将来結婚を誓った竹本世津(田中裕子)だと知る。世津は、原爆投下時に母胎で被爆した胎内被爆者であり、現在は末期がんに冒されている。
 吾朗は、医師である父雅之(岸部一徳)と世津との間に生まれた子であるが、母が吾朗を置いて家を出て行ってしまったことに強い不満を持っており、母の最期に会いに行こうとはしない。一方、春平は、世津が広島へ旅立つときに船着き場に見送りに行くことができなかったことを深く後悔し、そのときの想いを伝えたいという気持ちを強く抱いている。

【キャストと感想】
 頑固で淋しがり屋の老人・春平を演じる緒形拳さんは、警備の青年を呼び出しては茶目っ気たっぷりの最高の笑顔でごまかします。孤独な老人の虚脱感と無邪気さを穏やかで静かな時間の流れの中で見事に表現していました。
 充実感をもたない警備員役の玉山鉄二氏は、ぶっきら棒で投げやりな青年ですが、どこか老人への愛着を感じている設定です。若者を等身大で描いていて、緒形さんとの二人芝居に近いこのドラマで、秀逸の演技。玉鉄なかなかです!母と川べりを歩く姿は本当にしみじみ感動しました。
 若き日の世津には、朝倉あき。先日のドラマ「学校じゃ教えられない」(ブログ記事はこちら)でも、清楚でフレッシュな印象を抱きました。
 河原吾朗に、母の過去のことを訥々と伝える父河原雅之には岸部一徳氏。息子に母の過去を問いただされる場面では、長いせりふを一気呵成に聴かせる巧みな話術で、息子や世津への懺悔と後悔の入り混じった哀惜の念を感じさせる誠に感慨深い名演技でした。
 世津役の田中裕子さんは、さすがに大女優。約40年ぶりの邂逅にも表情ひとつ変えず、春平や息子の吾朗に対して、毎日接している家族のような自然な受け入れ方をします。そのことが逆に重い過去や悔恨をひしひしと募らせました。

【兄へ母の病状を知らせる手紙】
 世津(母)は、東京で夫と娘と一緒に暮らしています。
 世津の娘晴子から、面識のない兄・河原吾朗に宛てた手紙の文章が実に美しい名文だと感じました。
 日本人の美しい心を大切にしたこんな名文は、世津の優しい心を受け継いだ娘だからこそ書けるのでしょうね。あまりにも素晴らしいので全文掲載します。
 そしてまた、大西麻恵さんの澄み切った清らかな声での朗読が、切々と心に沁みました。

「突然のお便りで驚かれることと思います。
 私は竹本世津の長女の晴子と申します。
私にとって母世津はかけがえのない大切な愛しい人ですが、その母が国立がんセンターで全身転移のがんのため、余命3か月と宣告されたのです。
 この恐ろしい事実を河原様にお伝えすべきかどうか迷いましたが、母の実子でいらっしゃる河原様に何もお伝えしないままでいるのが心苦しく、今さら何をとお思いでしたら、それはそれでよいと自分に言い聞かせ、一応お知らせすることに決めました。
 母にも父にもこのことは相談せず、私の一存で決めました。もし上京の機会がおありでしたら、母に会ってやって頂きたいのです。母は何も申しませんが、きっと喜ぶと思うのです。非礼を顧みずぶしつけな手紙になりました。本当に申し訳ありません。
 そろそろ入梅の折、お身体にご自愛くださいませ。」

【追悼番組】
 少し時間をおいて、緒形直人、緒形幹太、津川雅彦、池端俊策各氏が出席しての追悼番組「名優緒形拳さん逝く」が放映されました。池端さんは、ドラマ「帽子」の背景呉市の出身で、同作の脚本家でもあります。映画「復讐するは我にあり」「優駿」などでも緒形さんと関わった方です。
 ここでは、緒形拳さんは、「俺たちはちゃらちゃらしたことをやっている(注:芸能活動のこと)からこそ、本気でやらなきゃいけないんだ」というポリシーを持っていたとの津川雅彦さんの言葉が印象的でした。

ドラマ「帽子」は緒形拳さんの金字塔と言っても過言ではない作品。小津安二郎監督が「東京物語」で描いた老いの意味。ヘンリー・フォンダ晩年の「黄昏」での至福に満ちた穏やかな老い。これらの名作とも比肩されるべき作品かと思ったりします。
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コメント
この記事へのコメント
初めまして
初めまして
ぶろぐ村からやってきました。

先日の「帽子」の放送、私も録画して、もう何度も観ました。実に感動的なドラマで、病をおして走っておられる緒方拳さんの演技、凄絶なものだったですよね~。
緒方拳さんは、新国劇の島田、辰巳の両師を尊敬されていましたが、そのお二人に並ぶような名演技だったと思っています。
もうあのドラマを撮っていた頃は、相当に病が進んでおられたと思うのですが、そのことを少しも感じさせない演技だったですよね~。

これからも、きっと何度も観るドラマになりそうです。

ミ(`w´彡)
2008/10/14(Tue) 11:27 | URL  | rudolf2006 #rD0dw0ug[ 編集]
初めまして rudolf2006さま
つたないサイトにようこそお越し頂きました。
よろしくお願いいたします。

私もDVDで永久保存版にしました。おっしゃるように、実に人間の機微を見事に表現した感動的なドラマですよね。

新国劇の辰巳先生にTV局で偶然会ったとき、「あなたはどこの誰ですか」と言われたというエピソードも聞きましたが、そういう苦悩をバネにいつも全力投球されていたんでしょうか。本当に新国劇の両巨頭に匹敵する重厚で存在感だったと思います。病状もかなり深刻だったはずです。でも、病苦を感じさせない飄々とした味さえ感じさせていましたね。

rudolf2006さんのサイトにも、これからご挨拶にうかがいます。日々素敵なCDを紹介されていて、無知な自分にはいろいろと勉強になります。
2008/10/14(Tue) 17:55 | URL  | もうやだ #-[ 編集]
はじめまして
はじめまして、先日の緒形拳さんのドラマ帽子
ぜひ見てみたいです。保存版としてDVD5枚に
録画してくださる方はいらっしゃいませんか?
もちろんお礼はいたします。NHKの広島放送局に連絡を取ってみたらもう再放送の予定はないそうです。よろしくお願いいたします。
2008/10/19(Sun) 12:07 | URL  | さち #-[ 編集]
はじめまして!
コメントどうもありがとうございました。
再放送の予定はしばらくないんですね。
本当に申し訳ないのですが、著作権の問題とかあるかもしれませんので、どうかご容赦くださいませ。すみませんでしたm(__)m
2008/10/20(Mon) 01:07 | URL  | もうやだ #-[ 編集]
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